佐藤養助商店「稲庭うどん」

秋田を代表する食
「稲庭うどん佐藤養助商店」

日本三大うどんのひとつ

四国の讃岐うどん、名古屋のきしめんとともに、日本三大うどんといわれることもある秋田の稲庭うどん。なめらかな舌ざわりが特徴。それでいてしっかりとコシがあり、噛むほどに味わいがある。
稲庭うどんが誕生したのは江戸時代初期だといわれる。秋田藩稲庭村の小沢集落(現在の湯沢市稲庭町字小沢)に住んでいた佐藤市兵衛が地元産の小麦を使って干しうどんを作ったのが始まり。そのおいしさが広まり、藩主御用となるまでになった。ただし、当時は高級品で庶民の口に入ることはあまりなかったという。秋田の特産品として知られるようになったのは、明治以降のこと。全国でさまざまな賞を受けるなど、認知が広まり、秋田といえば稲庭うどんといわれるほどになった。

独特の食感を生む”空気”

今回は佐藤養助商店におじゃまして、稲庭うどんの作り方から教わった。稲庭うどんは通常、三日間をかけて作るという。まずは小麦と塩水で練る。塩水の量は決めていないのだと、お話を聞いた工場長の髙橋さんは話す。その日の天候や湿度によって変えていく、迷ったときは自分の耳たぶを触って、その固さに近づけるのだという。生地を練る時に、空気を入れるのが稲庭うどんの特徴。それが独特の食感とコシの強さにつながるのだそう。手延べでどんどん伸ばす。縄を綯(な)うように伸ばしていく。中田もその作業を体験させてもらう。手で伸ばしながら二本の棒に掛けていく作業。「うまいですね」と髙橋さんは中田の作業にびっくり。体験ものは「やっぱり難しい」というところだが、これはたしかに、素人目に見てもスムーズだった。「初めてとは思えない」と髙橋さんは繰り返していた。伸ばした麺を乾燥させていく。「これらのすべてを感覚でやっていくんです。だからほかで同じものは作れないんです」と髙橋さんは話す。

温かい稲庭うどん

最後に試食をさせてもらう。明治以降認知が広まったと最初に言ったが、もともと製法は公開されておらず、言ってみれば一子相伝だった。そのため皇室献上品など限定的にしかなかなか流通しなかったのだが、1972年に製法が公開されてから一気に一般にも広まったのだそうだ。
ごちそうになったのは、あたたかいうどん。もしかしたら稲庭うどんというとざるうどんのイメージが強いかもしれないが、強いコシとなめらかな食感は温うどんにもぴったり。どんどんとはしが進んでいく。
秋田の食を代表するもののひとつ、稲庭うどん。それは職人の感覚が生んだ文化でもあったのだ。

ACCESS

有限会社 佐藤養助商店
〒012-0107 秋田県湯沢市稲庭町字稲庭229
URL https://www.sato-yoske.co.jp/