NIHONMONO「にほん」の「ほんもの」を巡る旅マガジン

一千年の歴史を誇る雄大な焼物「備前焼」

一千年の歴史を誇る雄大な焼物
「備前焼」

土づくりにはじまる

備前焼の歴史は古い。その発祥は平安時代から鎌倉初期にかけてといわれており、日本を代表する中世六古窯に数えられている。歴史が古いだけあって、備前焼は無愛想ともとれるほどシンプルだ。釉薬(うわぐすり)は一切使用せず、絵付もしない。土の形を整え、ただ焼くだけ。しかし、そんな簡素な手法にもかかわらず、備前焼には奥深い魅力がある。
まず1つには、土づくり。備前焼では、田んぼの土と山土、黒土を混ぜ合わせ、数年寝かせてから使うことが多い。その配合のしかた、寝かせる期間など、土づくりには技量が大きく影響する。備前の細かくねっとりとした土を何年も寝かせていると、そのなかには微生物が繁殖し、80種類を超える酵母が生まれるという。こうしてつくられた土を焼くと、美しくしっとりと吸い付くような器に焼きあがる。

高温で長時間焼き続ける

そして、窯変(ようへん)といわれる色の変化。1300℃の高温の窯で2週間も焼き続けられる備前焼は、焼成中に灰に埋もれた部分だけが黒や青、灰色になり、直接炎に当たった部分は赤褐色になる。これは陶工たちの窯詰め作業のノウハウも左右するが、偶然の要素も大きく、1つとして同じ変化にはならない。こうした段階を経て現れる模様は、神秘的ですらある。
そんな備前焼を見せてもらうために、人間国宝の伊勢崎淳氏の窯を訪れた中田。伊勢崎氏は昭和11年生まれ。2004年に人間国宝に認定され、その作品は02年に新首相官邸のロビーや美術館などを飾っている。その窯で備前焼のレクチャーを受け、土ひねりを体験させていただいた。
土と炎が織りなす備前焼――それは、自然と人間が一体となって生み出した1つの小さな世界のようだ。

ACCESS

陶芸家 伊勢崎淳
岡山県備前市