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栄養価の高い京野菜
野菜農家の14代目として活躍する樋口昌孝さんの作る野菜は、一般の市場には出回らない。料亭に直接卸すものと、「振り売り」といって大八車を押して直接販売をするだけだ。ひとつひとつ丁寧に育てるため、大量生産ができないからだ。
そもそも、海から遠い京都では、新鮮な海産物を得られず、それで発展したのが「京野菜」だという。
経済の中心であったため全国から多種多様な野菜が持ち込まれ、野菜作りに適した気候もあり、京都ではさまざまな野菜が作られた。代表的なものとしては、水菜や賀茂ナス、九条ネギなど。原種に近い野菜のため、栄養価が高い。例えば伏見とうがらしは、タンパク質、カルシウム、リンの含有量が一般のピーマンに比べて2倍ほどあるといわれ、食物繊維にいたっては3倍近くもあるという。旨味が濃いのも特徴のひとつだ。しっかりとした野菜の味がぎっしりと詰まっている。
京野菜農業の勉強を続ける
京野菜を現在のような形で受け継ぐことができたのは、京都の農家のプライドのためだともいわれている。うまい京料理にはうまい野菜が不可欠だ。自分たちが作る野菜がうまくなくては、京料理がまずくなる。農家にもそんな矜持があり、それが京野菜を廃れさせなかった。樋口さんもさらに美味しい野菜を求めて、勉強会を開いている。
料理は料理人のプライドだけじゃない、農家のプライドも詰まっているんだ――そんなことに気付かせてくれた訪問だった。