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繊細に織り上げられる着物。
紋紗(もんしゃ)とは、特殊な織り方で作る軽くて薄い「紗地」に、平織りで紋様を織り出した織物のこと。
平安時代以降「うすもの」と呼ばれて、公家の夏装束とされてきた。現在でも着物に親しむ人たちの間では、夏の定番として定着している。紋紗は、織物技法のなかでも複雑な技法を用いる。しかしながら、ほかの技法よりも、創作性に富むという特徴もある。古くから人々を魅了してやまないのはそのためだ。
清らかなグラデーション。
今回、お話を伺ったのは、2010年に紋紗の技法で人間国宝に認定された土屋順紀(よしのり)さん。土屋さんは、美術学校を卒業後、紬織で人間国宝の認定を受けた染織家の志村ふくみさんに師事した。
1981年に独立し、岐阜に工房を構え、伝統の紋紗と、植物染め、そして色でグラデーションを作る絣(かすり)の技法を融合させ、独自の柔らかな作品を作り出してきた。こうして生み出された着物は、織物として芸術品として高く評価されている。
中田が拝見させていただきた作品。精緻な文様と、清新な色合い。涼やかで、まさに夏の着物という雰囲気だ。
「長良川や山など、自然からよいデザインのイメージをもらう」という土屋さんの言葉からは、豊かな自然あってこその芸術なのだな、と考えさせられる。