最高品質の豚肉をつくるために世界を奔走
「ほら、あそこの豚。しっぽ太いじゃないですか。しっぽが太い豚は、ロースとか食べる部分も太くて多いんですよ」
「こうやっていくつかの品種の豚を集めると、『こいつ、違う豚の匂いがする』っていじめにあったりもするんです」
自分の子どもたちを見るように、目を細めながら語ってくれたのは、豚のブリーダーとして世界的にも有名な桑原康さん。
また、桑原さんは現在では希少品種の中ヨークシャー(Y)の美味しさにも注目した。
中ヨークシャーは、桑原さんが「世界で一番おいしい」というように、肉質、脂の質、すべてにおいて最高の品質を持っている豚だ。
だが、生産・経済効率がほかの品種にくらべて圧倒的に悪いため、飼育頭数が世界的に激減し、1996年には日本では7頭しかいなくなってしまったそうだ。
全国の高級レストランから注文がくる豚肉
そんな「世界で一番おいしい」中ヨークシャーから、「日本人の味覚にあった最高の豚肉を作りたい」と桑原さんが労力、コストなどの経済効率を度外視して生まれたのがLYB(ランドレース種×中ヨークシャー種×バークシャー種)、LY(ランドレース種×中ヨークシャー種)といった、中ヨークシャーをベースにした肉豚だ。
その肉は、最も固い部位であるもも肉でさえステーキとして楽しめるほどの柔らかさで、噛めば豚本来の旨みと香りが染み出す。
全国の高級レストランがその味に魅せられ、注文がひきもきらない豚なのである。
日本で唯一、6大原種豚すべてを飼育している桑原さんは、今でも、よりおいしい豚を求めて世界中を駆け回っている。