目の前に並ぶのは、約2万本を超えるたくさんのアマン壺と呼ばれるかめ壺。この土地では、この壺が並ぶ場所を“畑”と呼ぶのだという。陽の光を浴び、風雨やときには火山灰にも見舞われながら黒酢は育つ。鹿児島県霧島市福山は、黒酢の町だ。ここには8つの酢の醸造所があり、全国に黒酢を出荷している。
「なぜ福山という場所で上質な黒酢ができるのか、研究したこともあるようですが、完全には解明されませんでした。同じ原料で同じように造ったこともあるらしいんですが、うまくいかなかったそうです」と福山黒酢の久保園新司工場長は話す。
お酢が誕生したその歴史
お酢(ビネガー)が誕生したのは、実は紀元前5000年、今から約7000年前のメソポタミア南部にあるバビロニア(現在のイラク辺り)で造られたのが最初だと言われている。その後製法が世界中に広がりをみせ、麦、雑穀など様々な原料の酢が誕生しながら伝承され、日本には4世紀頃中国から伝わってきた。
この地で酢造りが始まったのは、江戸時代後期の1800年ごろ。この地でとれる上質な米、シラス台地が生み出すきれいな湧き水、そして夏は涼しく冬は温暖な気候が酢造りには最適の環境だったようだ。200年が経過した今も、作り方も昔から変わっていない。
今も変わらない「黒酢の作り方」とは
普通の黒酢と違うのは、使用する壺とその発酵期間だ。一般的な黒酢の発酵熟成期間は半年から1年ほど。しかし、福山黒酢が取り扱う黒酢は、最低でも3年以上、長いものでは10年もの間熟成させている。その発行期間の効果を最大限発揮させるのが、アマン壷とよばれる壺を使った、伝統的な壺造り醸造法だ。このアマン壷は太陽熱を吸収し、対流や温度調節を行うため、野外での発酵に適しているそうだ。アマン壷は使えば使うほど天然の酵母や酢酸菌が付着して良い壷となり唯一無二の黒酢を生み出すことができるのだ。
健康食品としても名高い黒酢、その効果とは
「発酵食品」を摂取することは健康にとてもよいと、テレビ番組や雑誌の特集で紹介される機会が増えている。最近では発酵食品である黒酢とにんにくを合わせたサプリメントなどが有名だが、黒酢自体に期待できる効能としては血糖値上昇の抑制や疲労感の改善などの効果があげられる。古くから、食べ物を発酵させると保存性が高くなるので、冷蔵庫がない時代の保存食として利用されてきた。発酵することでアミノ酸や糖類が発生し、食べ物本来の旨味を引き出すことができると、数年前には“塩麹レシピ”が流行っていたのも記憶に新しい。さらに、腸が消化する働きを助け、免疫力アップにも効果があることから、健康志向の高い人を中心に発酵をテーマとするレストランの人気なども増えている。
発酵食品というと、醤油や味噌、納豆などを思い浮かべるだろう。チーズや漬物、鰹節も発酵食品だし、日本酒や紅茶、ウーロン茶なども発酵食品、実は、日本人は日常的に沢山の発酵食品を口にしている。身近な食品だからこそ、いいものを選びたいと思う人もきっと多いはず。
桷志田では、壺畑のほかにも展覧コーナーやギャラリー、日本初の黒酢レストランを運営。レストランでは、すべての料理に「桷志田」の黒酢を使った限定ランチや、オリジナルの黒酢ドリンクを楽しむことができ、ショップでは玄米黒酢「桷志田」や、レストランの 味を商品化した人気の黒酢ドレッシングなどを購入することができる。
福山黒酢の商品は、味と香りにおいて、お酢に特有の刺激が少ないのが特長だ。“健康にはよいけれど、黒酢は飲みにくい”という常識を覆す味わいになっている。歴史が作り出した商品が、現代の社会に必要な、健康とおいしさのどちらも両立した味わいの黒酢になっているのが興味深い。
<写真左>伍年熟成 有機 桷志田 宝
5年もの歳月と手間をかけて壷の中でゆっくりと発酵、熟成を促した、素材や伝統の製法にこだわり抜いて作られた究極の黒酢。
<写真右>有機桷志田 宝 伍年熟成
原料と製法にこだわる「 桷志田」の秀逸な玄米黒酢。黒酢の概念を覆す優しい口当たり、芳醇な香りと旨味があり、1800日余り、大切に大切に宝ものを守るように育ててきた杜氏の想いをこめて『 宝 』と名付けられています。
豊富な調味料ラインナップ
そのほか、 桷志田には調味料もあり、そちらも黒酢の質の高さを生かしていてクオリティが高く好評だ。3年熟成の有機黒酢を使用した、「生フルーツ黒酢」は、新鮮で瑞々しいフルーツを丸ごと漬け込んで作った生フルーツ黒酢。ジューシーなフルーツ本来の香りと旨味と黒酢の魅力が生かされていて、酸っぱさが苦手な方にもオススメだ。調味料として、化学調味料不使用の「三杯黒酢」や鹿児島枕崎産鰹節をふんだんに使った「かつお節の黒酢ポン酢」は鍋でも使え、家庭で重宝する逸品だ。