安心安全でおいしい野菜を能登で
金沢市から車で90分。能登半島の中腹辺りに位置する人口わずか2500人あまりの小さな島、能登島。能登半島との間に橋がかかっていることもあり、県民にとって手近な観光地として知られているこの島は、中田も思わず「すばらしい」と声を上げるほど長閑で風量明媚な景色をのぞむことができる。
有機野菜を生産している高利充さんは20年ほど前、能登島に移住し自然農法を始めた。もともと金沢出身ながら当時は福岡で営業の仕事をしていたという高さんと鹿児島出身の妻・博子さんは、この島の自然と“土”に魅せられ、脱サラして農業の道を歩きはじめた。
「『安心・安全でおいしい野菜を作りたい』という思いで能登島に来ました。でも最初の5年間はほぼ収入がなかったので、漁師や郵便配達のアルバイトをしながら畑を耕していました」(高さん)長閑で風光明媚なこの能登島は、能登半島との間に橋がかかっていることもあり、石川県の人にとっては手近な観光地として知られている。能登島の土は、鉄分やミネラルを多く含む赤土。だが、そのままでは野菜づくりに適さない。高さんは土壌検査を繰り返しながら、草や緑肥をすき込み、微生物の力を借りて、徐々に地力を上げていったという。そんな努力が身を結び、NOTO高農園の野菜は徐々に人気となり、現在では東京を中心に金沢、大阪、神戸など全国120店以上のシェフからの注文が入るようになった。
「僕も妻も食べることが好きなので、いろんなレストランに行って、料理のことはもちろん、皿やカトラリーにあう野菜はどんなものなのかということを教えてもらっていたんです。そのうちにシェフのほうから日本にまだない野菜を作ってみないか、というようなリクエストをいただくようになりました」(高さん)
シェフ御用達の野菜が購入できる
有名レストランのシェフが農園を訪れ、直接ほしい野菜をリクエストする事も多いのだそう。そんなリクエストに応えているうちに、品種はどんどん増え、伝統野菜から西洋野菜、ハーブ、エディブルフラワーまで、その数は300種以上。カブだけでも伝統種から西洋種まで15種類以上あるという。また、2haから始めた畑は20haにまで広がった。野菜のみの農家としては破格の広さである。
「日本では誰も作っていないといわれると、よしやってみようと(笑)。それを繰り返しているうちにどんどん品種が増えていったんです。ひとつの土地で同じ野菜を続けて育てないで、ローテーションするようにしています」(高さん)
ここで育った野菜は、香りや味が力強い。味が濃いから、調味料も最低限で済む。まさに主役級の野菜たち、シェフたちがこぞって取り寄せるのも納得だ。
高農園では昨年から新しい生活様式導入に合わせ、個人向けに「グランシェフご用達野菜セット」の販売を始めた。取引先からの注文が減る中、シェフたちから「店が再開した時にすぐに高農園の野菜が欲しいので、頑張って作り続けて欲しい」と背中を押されたことがきっかけだ。
高農園の野菜を食べてしまったら、普段買うスーパーの野菜が物足りなくなってしまうだろう。赤土と太陽が育んだこだわりの野菜をぜひ味わってみてほしい。