東京とは思えない静寂な場所「明治神宮」
明治神宮は第122代天皇の明治天皇と皇后の昭憲皇太后を祀る神社で、都心にありながら東京ドーム15個分の広さを誇り、初詣では例年日本一の参拝者数で賑わう場所として全国でも知られている。
また、2012年にはミシュランによる「日本の3つ星観光地20選」にも選出されるなど、国の内外で多くの人から愛される日本を代表する観光地のひとつでもある。
この明治神宮は、1912年7月30日に明治天皇が、1914年4月11日に皇后の昭憲皇太后が崩御された後、お二方を偲ぶ神社の建設を熱望する国民の声で、ゆかりのある庭園があった代々木の地に創建された。明治神宮は日の出とともに開門し、日の入りとともに閉門する。中田英寿が訪ねた12月の開門は6時40分。「明治神宮が建設されたのは1920年。今から100年以上前のことです。約70万平方メートルにもおよぶ常緑広葉樹の森は全国から献木された約10万本の木々が植えられた人工林です。いまは国民から愛される豊かな森に育っています」
朝いちばん、ひんやりとした空気と植物のにおい。聞こえる音といえば、鳥のさえずりくらい。冬でも緑濃い敷地内を広報担当の権禰宜(ごんねぎ)、平尾旨鏡さんの解説を聞きながら歩くと、そこは東京とは思えない静寂な雰囲気と澄み切った空気に満ちている。
表参道は明治神宮へつづく参道
代々木は関東ローム層で、針葉樹は不向きだったため、カシ、シイ、クスなどの常緑広葉樹が植えられたという。また当時は、樺太(サハリン)、満州、台湾、朝鮮半島などからも献木が届いたそうだ。しばらく歩くと、大きな鳥居が見え、立派な本殿が姿をあらわす。早朝とはいえ、すでに参拝者の姿もちらほらあり、なかにはコートに身を包んだビジネスマンの姿も見える。「神宮に参拝してから仕事に向かう方もいらっしゃるようです。」
手水で手を清め、口をすすぎ、参拝へ向かう。ふと本殿の柱を見ると無数の小さな傷が目に飛び込んできた。
「これは初詣の参拝者が遠くからお賽銭を投げるためについた傷です」
さすが毎年300万人以上が初詣に訪れる明治神宮。こんな傷は他では見たことがない。そういえば、初詣で賑わう映像はニュースでよく見るが、静かな明治神宮はまるで別の雰囲気。ふと都心にいることを忘れてしまいそうになる。
「普段はあまり意識されることがないかもしれませんが、表参道は明治神宮の参道なんです。原宿の交差点と国道246号の交差点には、石灯籠が立っています」(平尾権禰宜)「表参道という言葉があまりに一般的なので地名のように思っていましたが、もともとは明治神宮の参道なんですね」(中田)
有名な場所でも、あらためて訪れるといろいろな発見があるものだ。早朝の明治神宮で、これまで東京では感じたことのない空気に触れることができた。