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アートと自然が整然と配された総合公園
札幌市内にあるモエレ沼公園は、世界的に著名な彫刻家イサム・ノグチが設計した総合公園だ。ガラスのピラミッド ”HIDAMARI“を中心に、モエレ山、プレイマウンテンなどを配して、イサム・ノグチがデザインした遊具126基も備えられている。コンセプトは「全体をひとつの彫刻作品とする」ということ。これら3つの施設は公園の中央にちょうど三角形になるように配置されており、高さを揃え視点が定まるようになっている。イサム・ノグチのファンだという中田は、ギャラリーや自然とアートが融合した美しい景観を時間をかけて散策してまわった。
意思を引き継ぎ完成した最後の作品
彫刻の枠を超えて、数々のランドスケープ・デザインに携わっていたイサム・ノグチが札幌の公園を手掛けたのは、ある偶然の機会によってだった。知人を通して、「札幌は広大な土地がある」と市の緑化構想を聞き、たった3ヵ月で来日を果たした。その時、83歳の彼は、設計が完了した数ヵ月後に息を引き取る。亡くなった後、「そのままのスケールと配置で」という条件のもと、その意思を引き継ぎ、彼の構想は着工に移された。本来は10年の予定だったが、従来にない方法が求められたため、完成には17年の月日を要した。「モエレ沼公園」はイサム・ノグチの最後の作品であり、集大成である。