完全放牧·こだわりの草で育つ牛
17年前に北海道に移住し酪農を始めた山本照二さん。山本牧場では牛を完全放牧し、牧草のみで育てて、美味しい牛乳を生産している。東京ドーム5個分の広さの牧場は、遠くに国後島がかすみ、摩周岳に見下ろされる。「時々手を合わせたくなる」というほどの絶景が広がる大地だ。「こんなに放牧に適した場所はない」と山本さんはこの土地で放牧することを即決したという。摩周岳の頂上には摩周湖があり、その伏流水を牛が飲む。大自然の恩恵を思う存分、牛も人も享受している。
時間と手間をかけた牛乳
「酪農1年目は完全放牧という飼い方と寒さに慣れず、40頭の牛のうち4頭も死んだ」と当時の苦労を話してくれた。ホルスタインは改良されていて、外で放し飼いにするような飼い方は難しかったが、次第に順応性を見せるようになった。草地も同様に時間がかかった。「化学肥料から有機肥料に切り替え、2~3年前にやっと完全に整った」という。有機肥料は牛フンと鶏フンとを混ぜている。牛フンは窒素が多いので、真緑色の苦みのある草になってしまうが、今はバランスのとれた美味しい黄緑色の草が生い茂る。
新鮮な絞りたて牛乳をいただく
放牧していた牛を追い、牛舎に入れ、搾乳の作業が始まる。牛は山本さんに声をかけられると、ゆっくりと草を食べながら牛舎に集まってくる。1日2回の搾乳は機械で行われ、搾りだした牛乳はそのままパイプを通り冷蔵庫に溜められる。600kgの牛からは1回約5kgの牛乳が搾れるという。その場で、中田も搾りたての牛乳を飲ませていただく。「さっぱりしていてえぐみがない。意外なほど美味しい」と新鮮なミルクを味わった。「養老牛放牧牛乳」の夏の「グリーンラベル」はさっぱりとしたキレがあり、冬の「赤ラベル」はコクが際立つ味わいとなっている。