日本三大地鶏の一つ「比内地鶏」
地鶏として有名なものはいくつもある。その代表格のひとつが「比内地鶏(ひないじどり)」だろう。ちなみに日本三大地鶏と言われるのが、薩摩地鶏、名古屋コーチン、比内地鶏なのだ。その比内地鶏の歴史や「おいしさ」についてお話を聞くために、比内地鶏商品を扱った店舗やレストランを出店している「秋田比内や」へ伺った。
国の天然記念物の比内鶏
比内地鶏というのは、読んで字のごとく、秋田県北部の比内地方で飼育されてきた鶏だ。ただし、「比内鶏」というのは食べることができない。現在、比内鶏は、希少価値の高い日本固有の鶏として国の天然記念物に指定されているのだ。
選ばれた鶏、「比内地鶏」の誕生
比内鶏はもともと美味として知られていたそうだ。(ちなみに天然記念物の指定を受けたのが1942年のことなので、もう長いあいだその肉は口にされることはなかった。)ただし、身体が小さくて食肉があまりとれないこと、繁殖率がほかの鶏に比べると低いことなどから、食肉商品として流通させるには向いていなかった。そういった面を解消するために生まれたのが比内地鶏。比内鶏のよさを保ちながら、繁殖率などをあげるために、秋田畜産試験場にいた周百首から選ばれたのがロード種。雄の比内鶏と雌のロードを掛け合わせて、比内地鶏が生まれたのだと教えてくれた。「比内地鶏」という名前を使うためには、例えば、28日齢以降で1平方メートル5羽以下で飼育したものといった厳しい規定をクリアしなくてはいけない。それだけ選ばれた鶏でもあるのだ。
飼育期間の長い比内地鶏
比内地鶏を飼育している阿部さんの農場にも伺い、実際に飼育している現場も見学させていただいた。阿部さんによれば、やはり比内地鶏はどこのブランド地鶏よりも飼育期間が長いという。例えば名古屋コーチンが120日であるのに対して、比内地鶏はさらに一ヶ月、150日の飼育期間が必要だという。「だからこそ、健康に育てたい」と阿部さんは話す。
世界に誇る比内地鶏の特徴
比内地鶏の肉の特徴は、風味とコク。ヤマドリのようなしっかりとした香りがあり、噛めば噛むほどに口のなかにしっかりと味が広がっていく。 また、鍋の具材としても適している。「脂がおいしんです。だからスープの国も違う。運動しているから脂が澄んでるんですね」と教えてくれた。秋田といえば名産きりたんぽ。きりたんぽ鍋にも比内地鶏を使うのか中田が聞くと、「いやいや、やっぱり高級ですからね、なかなか」といって笑うが、その澄んだ脂が作り出す比内地鶏のスープを想像すると、ぜひとも食べたくなってしまう。
現在では比内地鶏はその味が評価され、イタリア料理やフランス料理などの食材としても使われるようになった。世界に誇る日本の食材のひとつなのだ。