秋田を代表する工芸「曲げわっぱ」
おひつやお弁当箱などによく使われる木製の工芸品。一般的に「曲物」と呼ばれる工芸品は、青森や静岡など全国にある。そのなかで唯一、国指定の伝統工芸品となっているのが、ここ大館市で作られる「曲げわっぱ」だ。
そう教えてくれたのは、佐々木悌治さん。伝統工芸士として活躍するかたわら、大館曲げわっぱ協同組合の理事長も務めている。大館市にある「曲げわっぱ体験工房」におじゃまして話を聞いた。
大館曲げわっぱの歴史は古く、起源は奈良時代までさかのぼることができるともいわれている。生産が盛んになったのはいまから約400年前のこと。藩政時代に困窮した財政を立て直すために、佐竹氏が武士の内職として奨励したことに始まる。それ以降、大館の名産として知られるようになり、1980年に国の伝統工芸品指定を受けるまでになった。
曲げわっぱの天然杉がピンチ
大館曲げわっぱの材料は秋田の天然杉。その美しい木目と、弾力性を兼ね添えたのが秋田の天然杉だ。曲げわっぱという工芸を支えてきたといってもいい素材だが、実は2013年に自然保護の観点から、国有林の杉伐採が禁止となってしまった。いろいろな意見があると思うが、曲げわっぱの9割をまかなってきたのが秋田天然杉だというのは事実。曲げわっぱとしては、大きな痛手だ。
「とりあえずは在庫の木材を使っていくしかない。組合では森林管理署と『曲げわっぱの森』というのを保護地区として契約しています。そこの木を伐採しないで残しておきたいです」と佐々木さんは話す。植林した杉は木目が荒く、あの美しさはまだ出ないそうだ。しかし、数十年から100年と経っていけば細かな木目を持った杉になると思うとも話してくれた。
新しい挑戦を
秋田天然杉の問題はこれから越えていかないといけない大きな問題だが、目の前にある曲げわっぱはやはり美しい。もっとも人気があるのは、やはり手頃な弁当箱だそうだ。それとおひつも同じように人気。つまり「ご飯」にまつわるものが人気というわけ。となればご飯大好き中田ももちろん注目。
「ご飯は圧倒的に美味しくなる。全然違いますよ。曲げわっぱがご飯のよけいな水分を吸収してくれるんです。これは杉の特徴。ヒバや檜も調湿性はありますが香りが強いから、やっぱり秋田杉のほうがいい」
400年の歴史を持つ曲げわっぱ。その歴史を踏襲するのは大きな使命なのかもしれない。「そのなかで新しいチャレンジはありますか?」と中田が聞いた。佐々木さんは「グッドデザイン賞に選ばれたものもたくさんある」と教えてくれた。なかには「Wa MIRROR」と題された曲げわっぱを外枠に使用した鏡もある。柔らかな風合いがインテリアとして映える秀逸なデザインだ。歴史にとらわれることなく、新たな挑戦も続けている。