誰もが知っているお酒「十四代」
今や、誰もが知っている銘酒といっても過言ではない日本酒「十四代」。
日本酒を表現する言葉のひとつに挙げられる「淡麗辛口」は、スッキリとした喉ごしのキリっとしたお酒ということ。それに対して十四代は「芳醇旨口」と語られる。文字通り、香りがたち、お米の旨みと甘味がしっかりと出ているお酒だ。またそれなのに口に甘味が“残る”ことがない。淡麗にあるように、飲み終わったあとにもすっきりとした味わいだけが残り、どっしりとした濃厚なおいしさと、いくらでも飲めてしまうのではないかというさっぱり感というふたつを楽しめてしまうのだ。これが創業以来約400年という歴史の積み重ねから生まれた十四代の最大の魅力である。
火入れの変化でより美味しい「十四代」を
「消費者においしいお酒を飲んでいただくのが我々の仕事」と話すのはお話を伺った、高木顕統(あきつな)さん。ちなみに高木さんは、十四代を造る高木酒造の”十五代目”。高木さんは品評会に向けた酒造りではなく、我々一般の消費者においしいお酒を飲んでもらうことこそが自分たちの仕事なのだと言ってくれた。
そのために常にチャレンジをしている。例えば火入れの作業。
「今年は火入れを変えます」と言うように、毎年毎年新たな考えで試行錯誤を繰り返している。
「温度を急激に上げて下げる、それで香りを封じ込めるんです。今は瓶燗するのが一番いいとされているけど、最近違うんじゃないかなと思うんです。空気に触れさせず、温めてから瓶詰めしたほうが良い気がする。だからそれを考えて、新しく変えてみようと思うんです」。そんなふうに熱く語ってくれた。
人と機械で作る「十四代」
チャレンジというと、最新の機械、最新の研究というように、最新の部分だけに飛びついてしまうことになりかねない。東京農業大学の農学部醸造学科を卒業した高木さんはもちろん最新の部分にも着目して、自らのこだわりを実現するために最新の機械を導入してクオリティを追求することにも余念がない。
でも、「人」にしかできない部分、現場で人から人にしか伝えることのできないある意味でアナログな部分も大事にしている。例えば麹造り。大吟醸ともなれば50時間以上の時間がかかり、しかも3時間ごとに麹蓋の積み替えをしなくてはいけないので寝る間もないほど。麹室の隣で仮眠をとるぐらしかできないのだという。
それでも、こだわって作る。「どんなに大変な思いをしても、いい酒ができればそれが喜びに変わってしまうんです」と高木さんは話してくれた。
濃厚なうまさとすっきりした喉ごしが混在する最高の「十四代」は、さらに先を追求するチャレンジと、地味だけれでも避けて通れない人の手間という熱意が作り出しているのだ。