独特の技法で生まれる強靭な和紙「泉貨紙」/愛媛県西予市

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強度が強い2枚重ねの和紙

大州(おおず)和紙の産地・五十崎から、30kmほど南。ここ野村町にも、和紙づくりの伝統が残されている。
野村町に伝わる和紙は、江戸時代に考案された泉貨紙(せんかし)というもの。漉き上がった直後の和紙を2枚重ねて強靭さを出すのが特徴だ。
この泉貨紙、ただ2枚の紙を重ねればいいというものではない。目の細かい簀(す)で漉いたものと、粗い簀で漉いたものを組み合わせて1枚にするのだ。こうして繊維の絡みが違うものを2重にすることで、倍以上の強度が生まれるのだという。しかも、水分の多い桁の上で重ね合わせるため、きっちりと貼り合わせられ、はがれることもない。
この技法は、和紙のなかでも泉貨紙だけに見られる特別なものだ。

受け継がれる和紙の漉き手

かつては、その強靭さゆえに京や江戸の公家、武家のあいだで書画や書籍用に重宝され、また庶民にも油紙、帳簿の表紙、質屋・呉服屋のエブ札、反物の畳紙(たとうし)など多くの用途で愛されてきた。野村町では農家の冬の副業として栄えたが、戦後は需要が減って廃業者が相次いだ。
そんな風前の灯ともいえる泉貨紙を今に受け継ぐ、菊地孝さんを訪ねた。1980年、泉貨紙が国の選択文化財に指定された当時、泉貨紙の漉き手は孝さんの父・定重さんしか残っていなかったという。
孝さんは「伝統の技を自分の代で絶えさせてはならない」と、勤めていた大阪の建築会社を辞め、国指定無形文化財技術保持者の父に弟子入り。厳しい修行をしたかいあって、孝さんの漉く紙は東大寺の「お水取り」の紙衣にも使われている。

現在は、次女夫婦が跡を継ぐべく修行に励んでいるという。こうして伝統の技術が消えることなく受け継がれていくのは、私たちにとっても嬉しいことだ。

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菊池製紙
愛媛県西予市野村町
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