遠野のわさびの歴史
わさびの有名な産地といえば長野県や静岡県が有名。両県で約9割のシェアがあるが、岩手県も全国トップ5に入り、東北一の生産量を誇っている。とくに有名なのが遠野市宮守町。そこで葵食品加工生産組合の佐藤昭悦さんにわさび田に案内してもらった。
遠野でわさび栽培が始まったのは今から100年ほど前の1915年のことだそう。遠野は湧水が豊富であるうえに、その湧水は年間通して一定の温度であり、わさび栽培には適した地域なのだそうだ。そんな話を聞いているうちにそのきれいな水がしんと張っている澄んだ風景が目の前に現れた。静岡のわさび田を研究して、畳石敷きわさび田という技術を導入したのだそうだ。そこにはビニールハウスも設置してあった。この地域は当然のように冬は寒さが厳しい。そこで冬にわさびが凍らないようにビニールハウスを活用しているという。
きれいな湧水がわさびを育てる
おいしいわさびはきれいな水でしか育たない。水こそが命なのだ。岩手県の遠野市のなかでも宮守町達曽部(たっそべ)地域一体は石灰岩できれいな水が湧く地域がたくさんあるという。その遠野のなかでもこの宮守町地域はとくに湧水がたくさんあるという。そのきれいな水を使って一年を通してわさびを栽培しているのだが、いちばんおいしいのは味と香りがぎゅっと凝縮される冬だそうだ。
この遠野のわさびの強い味方である湧水に、東日本大震災は影響を与えたという。わさび田の水が濁ってしまったのだ。一部では湧水が止まったというところもあったそうだ。「もうダメかもしれないと思いました」と佐藤さんは当時を振り返って話をしてくれたが、水はみごとに復活した。
「1週間後にまたちゃんと湧いてきたんですよ。本当に驚きました。どういうことでこうなっているんだかわからないけど、本当に安心しました」
本当の生わさびはそんなに辛くない
わさびのイメージというと、多くの人が「辛い」、「ツーンとする」というものを持っているのではないだろうか。だが、実際の生わさびは「辛さだけではない」と佐藤さんはいう。
「それよりも香りが特徴的。すってからすぐに香りがたって、ご飯との相性が抜群なんです」
また、わさびは味噌ともよく合うのだそう。そこでこちらではわさび味噌という加工品も作っており、人気も上々なのだそうだ。現在は生わさびよりも加工品のほうが売上がいいという。ただ、是非とも生わさびの香りも味わってみてほしいという。チューブわさびとはまったく違った、本物のわさびの香りに出会えるはずだ。