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鹿革に漆で細密な装飾を施す「甲州印伝」
なめした鹿革に、漆で装飾をほどこした財布やカバン。しっとりとした風合いが落ち着いた雰囲気を醸し出す、大人のおしゃれだ。
「印伝」と呼ばれるこの革工芸、古くは奈良時代にも似たようなものがあったとされるが、その名で知られるようになったのは江戸時代に入ってから。名前の響きのとおり、インドから鹿の革が伝来したといわれている。「株式会社印傳屋上原勇七」はそんな印伝の伝統的な手法を受け継ぐ唯一の工房。
技術を“伝統”で終わらせない。そのために続ける努力
工房にずらりと並ぶ甲州印伝の品物は、漆によって装飾をほどこされるために、落ち着いた色合いのものが多い。「この技法で、もっと色のバリエーションなどを増やすことができないのですか?」と、中田が質問すると、印傳屋の出澤さんはこう話してくれた。
「たしかにそうなんです。印伝はじつのところあまり知られていない。だから、いま一番大事なことは、印伝を“伝統”ということで受け継ぐだけなく、いかに現代の若い人に使っていただくかということだと思うんです。そのために、つねにデザインなどを考えながら作っています。そうして伝統ということと関係なしに、身に付けてほしいと思っています」
「例えばファッションブランドとのコラボはしているんですか?」と聞くと、現在ニューヨークの企業とのコラボレーション企画が進行中だとのこと。それは仕上がりが楽しみだ。
日本で生まれて、そして今度はニューヨークに。時代や国境を超えてつながる文化。そこからまた新しい文化が育っていくのかもしれない。