優しく逞しい意匠に出会う「東北福祉大学 芹沢銈介美術工芸館」/宮城県仙台市

目次

芹沢銈介は“型絵染”を確立し発展させた

芹沢銈介は、明治28年・1895年に静岡県に生まれ、東京高等工業学校 (現・東京工業大学) の図案科を卒業。その後、人生の師となる柳宗悦氏や沖縄の伝統的な型染である紅型 (びんがた) に大きな影響をうけ、自身も渋紙を彫った型紙ともち米を主原料とする防染糊を用いて布や紙を染める、“染色” の道に進むことになる。
着物、暖簾、屏風、カレンダー、絵本、ガラス絵、本の装丁など、大胆でオリジナリティに溢れ、象徴的な美しさをもつ意匠はあらゆる作品に投影された。

そして1957年に重要無形文化財保持者 (人間国宝) に認定を受ける際、芹沢氏の持つ技術を表すために、「型絵染 (かたえぞめ)」 という名称が案出されたという。まさに 「型絵染」 という分野を確立し、発展させた作家なのだ。
芹沢氏は、工芸の分野のみならず幅広い仕事を手がけ、その豊かな作風が多くの人々に愛された。
今回、仙台市で中田が訪れた東北福祉大学 芹沢銈介美術工芸館は、その作品の数々を見ることができる。
◆写真左:「縄のれん文のれん」 木綿地型絵染 1955年 東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館所蔵

芹沢銈介の作品とコレクション

東北福祉大学 国見キャンパス2号館の中にある芹沢銈介美術工芸館は、1階、5階、6階の3フロア、6つの展示室からなる美術館だ。1984年に芹沢氏が他界してから5年後の1989年に開館した。
工芸館には、芹沢銈介氏の作品約3000点、制作に欠かすことのできない型紙を約1万点収蔵している。なかには、ステンドグラスのデザイン、肉筆画、下絵といった制作の過程を知る貴重な資料までも遺されている。

そして、もうひとつの大きな特徴は、芹沢氏が蒐集した諸民族の工芸品が収蔵・展示されていること。中国、東南アジア、アフリカ、中南米、北米、世界中から集められたコレクションは、芹沢氏の審美眼によって新たな価値を見出され 「もうひとつの創造」 と呼ばれている。
こうした膨大な収蔵品を広く紹介するため、展示替えを年に3、4回行い、テーマごとにその作品を展示しているのだ。
◆写真右:「鯛泳ぐ文着物」 紬地型絵染 1964年 東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館所

東北と芹沢銈介

芹沢氏と東北の関わりは深い。柳宗悦氏の唱えた 「民藝運動」 に賛同し、その中心的なメンバーとして活動した芹沢氏は、日本人の暮らしの中にある手工芸品、美術的な評価を受けていない物の素晴らしさを再評価することにも力を注いだ。現在、我々が耳にする“民芸品”といった言葉はこの活動から生まれた言葉なのだ。
東北の窯元を巡り、雪国の風土に触れ、仙台の町や鳴子温泉郷を好んで訪れた。そして、「東北にも自分の作品を展示する美術館がほしい」 と願ったのは芹沢氏本人だったという。

芹沢銈介美術工芸館の作品は、数十年の時を経てもその美しさを静かに讃えていた。 「和風でありながらモダン。50年以上前の作品でも古さを感じさせない」 と中田。大学の中にある美術工芸館、是非一度訪れてみてはいかがだろう。
(写真提供:東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館)

ACCESS

東北福祉大学芹沢 銈介美術工芸館
仙台市青葉区国見1-8-1東北福祉大学
URL http://www.tfu.ac.jp/kogeikan/
  • URLをコピーしました!
目次