日本で最も古い神社「お伊勢さん」
神社を紹介するときには「創祀○○年」というのが常套句だが、伊勢神宮の場合はそう簡単にはいかない。なぜなら日本で最も古い神社のひとつであるため、その始まりにまつわる明確な記述が見つかっていないから。
現在でも謎のままだが、諸説あるなかで有力なのが、「日本書紀」に見られる説話である。そこには、天照大神の鎮座する場所を求めて、倭姫命(やまとひめのみこと)が伊勢の国にいたったとある。これが垂仁天皇26年なので、書紀の記述に従えば、今から2000年以上前に建てられたということになる。
20年に1度の伝統を受け継ぐ
伊勢神宮が明確な記録として登場するものになると、685年に定められた「式年遷宮の制」を待たなくてはならない。式年遷宮とは定期的に社殿を作り変えて神座を移すこと。伊勢神宮の式年遷宮は20年に一度と決められており、次回の第63回遷宮は2033年の予定。神宮式年遷宮は、戦国乱世に一時中断を余儀なくされたが、それ以外は今日に至るまで連綿と守り続けられている。
伊勢神宮は、古くは天皇の氏神を祀る場所として、皇室や朝廷にのみ開かれた場所であった。それが時代が下がるごとに、武士や庶民にも門戸を開き、人々がこぞって神宮詣でをしたのは江戸時代のころ。
これがいわゆるお伊勢参りで、お蔭参りともいわれるこの参拝の列は、多いときで年間400万人を超えたというから、当時の人口のなんと6分の1が参拝したということになる。
神宮の神秘的な雰囲気と、温かな街のもてなし
現在でもお伊勢参りをする人は絶えない。その人々をもてなすように、参拝道の近くには「おかげ横丁」と呼ばれる一角がある。江戸時代のころの建物や店などを復活させた横丁だ。食事処、名産品店から太鼓櫓まで53もの店がひしめきあい、当時の賑わいを感じられる。
名物の伊勢うどんやてこね寿し、赤福餅などなど、伊勢の味覚を思う存分楽しみながらおかげ横丁を抜けると、雰囲気は一変。空気が一気に静謐(せいひつ)になる。
まるで森のなかのように、高く、太く育った大木が姿をあらわし、それまで賑やかだった対比からか、余計に厳粛な気分に。昔から「お伊勢さん」と呼ばれ親しまれてきた伊勢神宮だが、神宮の神秘的な雰囲気と、温かな街のもてなし、両方が魅力の秘密なのかもしれない。