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通常の倍ほど発酵させる「もろみ」の技術
池本酒造は、日本で唯一といわれる「低温超長期もろみ」の技術を有する蔵だ。もろみの発酵日数を長くすると、酒にコクが出る。しかし、普通、もろみは発酵日数が長くなると、溶けすぎて大味になってしまうのだ。
そんな難しい発酵技法を確立させ、普通の日数の倍ほど発酵させることで、よりふくよかでキレのある酒を生み出したのが、池本酒造なのである。
手間をかけて日本酒の味を作り出す
日数が倍ということはそれだけ手間がかかるということ。しかし味のためならそれも厭わない。
酒を搾る作業も、すべてが手搾りだ。機械で搾るとどうしてももろみをつぶすことになり、雑味がでる。それを避けるためなのだが、効率の面から考えればなかなかできる決断ではない。
「御膳水」の名水を仕込む
ところで、池本酒造が使っている水は、15代将軍の徳川慶喜が天狗党討伐のために訪れた際、「御膳水」として供された水だ。
琵琶湖は水の恵みをもたらしてくれるが、じつはちょっとした弊害もあって、太古の昔に生息していた葦などが堆積して酸化し、水が金気臭くなってしまう。生活用水に混入することもしばしばだったとか。
慶喜が逗留した寺の井戸にも金気が混じることがあったが、さすがに将軍に金気臭い水を出すわけにもいかず、良水として名高かかった近くの井戸水を使用した。その井戸水こそ、池本酒造の敷地に残る井戸水なのである。
池本酒造では、いわば、将軍によって太鼓判を押された水を、醸造から瓶洗いにまで、すべてに使用しているという。
ちょっとありがたいお酒である。
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