力強さ×優しさのギャップ「陶芸家 加藤春鼎」/愛知県瀬戸市

力強さ×優しさのギャップ
「陶芸家 加藤春鼎」/愛知県瀬戸市

陶祖にちなむ焼き物を受け継ぐ「加藤春鼎」

日本の陶芸において、「陶祖」と呼ばれる人物がいる。それが、鎌倉初期に南宋へと渡り、焼物の技術を学んだ加藤四郎佐衛門。四郎佐衛門は、帰国後、いい土を探して全国を巡り、最終的に瀬戸で焼き物を始めた。それが焼物の原点といわれ、それゆえに「陶祖」と呼ばれるのである。 瀬戸は、陶祖にちなむ名門が多く立ち並ぶ焼物の街。歴代当主が「加藤春鼎(しゅんてい)」を名乗る窯も、そのひとつだ。初代は名人と謳われ、当時の大茶人・益田純が何度も彼のもとを訪れたという。

2代目・春鼎は、初代の作風とは違い、桃山調の力強い作品を得意とした。なかでも、彼の代名詞ともなっているのが「引出黒」。まだ赤く燃えている器を窯から出し、冷水につけ、通常では出すことのできない深い黒を表出させる技法だ。器の質感も柔らかく変化し、見た目の力強さと口につけたときの優しさのギャップがおもしろい。

引出黒の魅力

今回お話を聞いたのは、1997年に春鼎の名を受け継いだ3代目。作陶を始めた当初は、器以外のオブジェなどを主に作っていたが、春鼎を継いでからは引出黒にすっかり魅了され、引出黒を中心に作陶をしている。伝統的な瀬戸物と先代の引出黒―、3代目・春鼎の作品には過去と現在、そして未来への視点が詰まっている。

中田はろくろを回すほかに、土練りの方法を教えていただく。土練りには大きく2つの意味がある。ひとつは土の固さを均一にすること、もうひとつは土から空気を抜くためだという。加藤春鼎さんの動きを見よう見真似し、土を練る。 こうして、またひとつ陶芸の基礎に触れることができた。

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陶芸家 加藤春鼎
愛知県瀬戸市