NIHONMONO「にほん」の「ほんもの」を巡る旅マガジン

下呂温泉を代表する老舗旅館・水明館

下呂温泉を代表する老舗旅館・水明館

平安時代に開湯し、徳川家康からはじまり4代の将軍に仕えた儒学者として知られる林羅山(はやしらざん)により、有馬・草津と並ぶ天下の三名泉として紹介された岐阜県中部に位置する下呂温泉。織田信長などの戦国武将も戦の傷を癒すために訪れた名湯は、林羅山の書に紹介されたことで知名度を高め、江戸時代には年間3万人もの湯治客が訪れるようになった。昭和5年にJR高山線下呂駅が開業したことで、各方面から新幹線で名古屋もしくは富山まで行けばそこから先は特急列車や普通列車でアクセス可能となった。名古屋からの直通バスが利用できるなど交通のインフラが整い、温泉街としてさらに発展。少し高めのアルカリ性単純温泉で、無色透明でとろみがあるなめらかな肌ざわりの「美人の湯」は美容や健康づくりにも適した泉質と言われており、飛騨川沿いに約40軒の旅館や土産店などが軒を連ねる温泉街で日々の疲れを癒そうと、毎年多くの観光客が訪れている。


昭和7年に岐阜県下呂市で開業した『水明館』は下呂温泉を代表する旅館だ。総面積1万平方メールもの広大な敷地には、山水閣、飛泉閣、臨川閣と館が3つ、室内温泉プールやスポーツジムも携え客室は全264室。それぞれの館に、緑と巨岩に囲まれた野趣あふれる「野天風呂」、街を見下ろす24時間入浴可能な「展望大浴場」、檜香る「下留の湯」と3つの大浴場があり、館内で湯めぐりが楽しめる。もちろん貸切風呂の用意もありゆっくりと名湯を楽しむこともできる。また、人間国宝の陶芸家 加藤卓男によるタイル壁画や名匠 横山大観の絵画など、美術的価値の高い作品を数多く所蔵しており、これもまた見どころの一つとなっている。能楽における流派の一つである観世流(かんぜりゅう)能楽師の故関根祥六(せきねしょうろく)師が監修した能舞台も館内にあり、創業90年の老舗旅館ならではの風雅に触れることで、日本ならではの「美」の魅力を再認識できるはずだ。


館内で堪能できるのは、五味・五色・五方を礎とした伝統的な日本料理。地に菜、川に魚、山に茸、そして飛騨牛。『京料理花かがみ』にて研鑽を積んだ料理長 池田真吾さんの手により、提携農家から仕入れる新鮮な野菜など、この土地ならではの旬の素材の魅力が十二分に引き出された和の会席は、体にも心にも優しく染み渡る。日本ソムリエ協会岐阜支部長を務めるソムリエの可児隆生さんが、その時々の料理に合わせたワインをセレクトし、料理と酒それぞれの味を一層引き立ててくれるだろう。


また、和の風情を追求した数寄屋造りの離れ全5室の「青嵐荘」では、窓から手入れの行き届いた日本庭園を眺めて四季の変化を感じられ、静かで心穏やかな時が流れる。部屋のしつらえは、季節の移ろいに合わせて夏畳によしず、雪畳に雪見障子と衣替え。伝統工芸の粋を凝らした調度品に囲まれた空間に身を置き、真心のこもったおもてなしを受ければ、心が自然と安らいでいくはずだ。1階の客室「葵の間」「夕顔の間」には、夜空をひとり占めできる天然温泉の露天風呂も完備されており一度は味わってみてほしい空間の一つだ。さらに「青嵐荘」では専属の料理長がその日厳選した食材を使用して特別な献立を用意してくれる。ここでも極上の贅沢が待っていてこの宿を選んだことに最大の満足を感じる瞬間になるだろう。

東海随一と謳われるスケールの大きさと、細部にまで行き届いたおもてなしの数々が旅のアルバムに満足という名の一ページを加えてくれるはずだ。

ACCESS

水明館
岐阜県下呂市幸田1268
TEL 0576-25-2800
URL https://www.suimeikan.co.jp/