NIHONMONO「にほん」の「ほんもの」を巡る旅マガジン

飛騨高山のモダン建築で楽しむ真土不二の料理・オーベルジュ玄珠

飛騨高山のモダン建築で楽しむ真土不二の料理・オーベルジュ玄珠

オーベルジュ(Auberge)とは、郊外にある宿泊施設のついたレストランを指すフランス語。日本でも、高度成長期にフランス料理が一般化し、バブル真っ只中の1980年代から地方でオーベルジュが開業されるようになった。オーベルジュとホテルの違いは、宿泊ではなく食事が目的になった施設であること。基本的に立地が自然豊かな場所にあるため、その土地ならではの食材を現地で味わい、そのままゆったりと休めるのがオーベルジュの醍醐味だ。

2020年8月、岐阜県北部に位置する飛騨高山と郡上八幡を結ぶ、紅葉の名所「せせらぎ街道」沿いにオープンした『オーベルジュ玄珠』。標高800mの山間地域、岐阜県高山市清見町の「ふるさと公園」内で、赤さびをまとった美しい曲線屋根を持つドーム型のパラモダン建築が、客をあたたかく迎える。“パラモダン”とは、このオーベルジュの設計を担当した国際的な評価の高い現代建築家の一人である遠藤秀平さんが提唱した概念。既成概念にとらわれないもう一つのモダンを意味し、この建築においても、コルゲート鋼板(波状の建築資材)による特徴的な意匠は多量の積雪に耐える機能性を保ちつつ周囲の山や川と調和し、館内でふんだんに使われた飛騨地方の杉と桧の手触りや木の香りが、上質な安らぎをもたらす。

オーナー小島伸浩の提唱する料理のコンセプトは「身土不二」。この土地の旬な食材を食べることで客に健康になってほしいと、高山市、郡上市、下呂市など近隣地域より素材を厳選。生産の現場に何度も足を運び、生産者の言葉や現地での体験から着想を得て、滋味溢れる心身がととのう料理を仕立てる。その根底にあるのは、“現代の魯山人”と謳われ三重県伊賀の里に七代続く伊賀焼の窯元「土楽窯」の陶工・福森雅武さんが提唱する食文化「食楽(しょくらく)」だ。野山を歩いて自然のささやきに耳を傾け、木や花を採っては活け、季節に応じてさまざまに料理を楽しむ。そして、良く喰らい、良く飲み、良く笑い、良く眠ること。日本らしい食文化の再定義とも言える「食楽」を客に体感してもらうため、この土地の恵みの本質を誰よりも理解する必要に迫られた。そして、日本を代表する和のオーベルジュ『徳山酢』にて、店主の徳山浩明さんより、この土地の風土や食材といかに向き合うべきかを学び続け、日々「食楽」を体現している。

自然豊かな岐阜県で育まれた山の幸やジビエ、川魚を使った料理に心も満たされ穏やかな眠りについた翌日は、馬瀬川のせせらぎとブナの天然林を蓄えた山が醸す空気が、爽やかな目覚めへと導いてくれる。日常に疲れ果てた心身に「平穏」という名の満ち足りた気持ちをもたらしてくれる体験はここでこそ味わえる別格の時間。人里離れた場所で味わう特別な料理と旅は、都会の喧騒やスマートフォンの通知から離れ、ふと我に帰る大切な時間を与えてくれる。

ACCESS

オーベルジュ玄珠
岐阜県高山市清見町大原801-5
TEL 0577-70-8861
URL https://hidaoppara.com/