やんばるの森が育む世界が認めた沖縄コーヒー「ADAファーム」/沖縄県国頭村

沖縄の自然豊かな土壌と植物としてのコーヒーとの出会い、そしてコーヒーを愛する仲間とのご縁。10年以上の歳月をかけて丁寧に育まれ、情熱あふれる物語が詰まった特別なコーヒー豆を作るADAファーム。沖縄らしい風味豊かなコーヒーは世界中の焙煎士やコレクターから熱い視線を注がれる稀少な存在となっている。

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豊かな森が育てる日本初のスペシャルティコーヒー

沖縄県北部、やんばるの森に位置する「ADAファーム」は、日本で初めて、スペシャルティコーヒーの認定を受けた農園だ。この称号は、カッピング(試飲審査)による100点満点の評価で80点以上という、極めて高いスコアを獲得した豆だけに与えられる。審査では「きれいな味わい(クリーンカップ)」や「際立つ酸味の質」「甘さ」など、10項目にわたる厳格な基準で品質がチェックされる。

栽培に最適とは言い難い環境にありながら、味と香りのポテンシャルが世界基準に達したことは、代表・徳田泰二郎さんの飽くなき情熱の結晶だ。その快挙は、今や沖縄コーヒー界全体の大きな希望となっている。

「徳田さんは常に進化されている。世界で認められてもなお挑戦をされていて、それが豆のクオリティに出ている。」そう話すのは、2017年に行われた「ジャパン コーヒー ロースティング チャンピオンシップ」(JCRC)で優勝、その後2019年イタリアで行われたWCRC(ワールドコーヒーロースティングチャンピオンシップ)に日本代表として出場し、初出場にして世界第2位に輝いた仲村良行さん。沖縄県沖縄市にある「豆ポレポレ」を営み、ADAファームの豆を愛する日本を代表する焙煎士のひとりだ。

徳田さんは沖縄でコーヒー栽培を始めた理由を「まずはここに素晴らしい農地、そして豊かな土があった。そして、植物としてのコーヒーに出会えた。さらに、沖縄のコーヒーを愛する仲間たちとの出会いもあった。それがすべてご縁で、気づいたらここまで来ていた」と語る。

沖縄の土と、コーヒーと共に

コーヒー栽培の適地は、赤道を中心に南北回帰線の間に広がる「コーヒーベルト」と呼ばれる熱帯地域だ。代表的な産地にはブラジルやエチオピア、インドネシアなどが挙げられるが、沖縄はその北限ギリギリの外側に位置する。台風や冬の低温、酸性の土壌など、コーヒーにとっては決して「快適」な環境ではない。

しかし徳田さんは、土壌改良で環境を無理に変えるのではなく、山がもたらす恵みやサイクルをそのまま活かす農法を選んだ。具体的には、周囲の原生林を残し、自然の森のサイクルを壊さずに、その中で作物を育てる画期的な農法だ。

その年の気候は、豆の個性にダイレクトに刻まれる。例えば、夏場に雨が多ければ健康的な果実がしっかりと育ち、逆に、乾燥や寒暖差が激しい年は、生命力が凝縮される。

徳田さんは「その年の沖縄がどんな年だったかは、豆が語ってくれる」と話す。ADAファームのコーヒーを飲むことは、その年の沖縄の雨音や陽光を追体験することと同義だ。それは単なる飲み物ではなく、沖縄の自然の「記録」が詰まった唯一無二の一杯なのである。

熟成を待ち、1粒1粒丁寧に手摘み

ADAファームのコーヒーの開花期は通常4〜7月。開花から7〜8か月かけて果実は成長・完熟となり、12月から4月までが収穫期となる。コーヒーの花は開花の期間が長いので、その分収穫の幅もあるが、本来コーヒーは雨季や乾季などメリハリがある気候の方が開花しやすい。しかし、沖縄の場合は気候が安定しないことが多く、コーヒーが開花のきっかけを掴めないこともあり、収穫の期間がより長くなる。果肉の成長だけでなく、種も成長していなければならないコーヒー豆は、種の様子を伺いながら一番いい状態を見極めていく。収穫前の気候や、コーヒーの木の個体差により、完熟した時の果実の表情や状態が変わっていくのだそうだ。収穫の際には、自分たちの目で熟度を確かめ、感触を確かめ、味わい、手摘みしていく。この丁寧さが、ADAファームの品質に繋がっている。

「特別なことはしていない」と徳田さんは語るが、1粒1粒のコーヒーの実に細かな手間をかけ育て上げている。

精製とは、収穫した実から種子(コーヒー豆)を取り出し、乾燥させる工程を指す。最高の状態で収穫されたコーヒー豆を、その豆の個性を見極め、皮を剥き、乾燥し、発酵させていく。ADAファームの精製は、常に同じではない。

「収穫までは同じ豆。しかし精製によって、驚くほど多様な表情を引き出せます。だからこそ、豆のポテンシャルを最大限に広げた状態で焙煎士へ託したいんです」と徳田さんは語る。目指しているのは、農園主として豆の個性を決めつけるのではなく、精製という『味の翻訳』を通じて、その豆が持つ可能性の選択肢を広げることだ。

また、栽培している品種にも個性がある。赤い実をつける「ニューワールド1号」は華やかな香りと明るく良質な酸味が特徴だ。一方、黄色い実の「ニューワールド2号」は、どっしりとした甘みの強さと、香ばしさとコクが際立つ。

数十年前に先駆者が沖縄に持ち込んだこれらの苗を、徳田さんたちは世界に認められる品質へと磨き上げた。今後は仲間と共に新種開発にも挑むという。自然に無理をさせず、土と対話しながら一粒一粒に情熱を宿す。その一杯を口にしたとき、きっと香ばしい香りとともに、生命力あふれるやんばるの森の風景が目の前に広がっていくはずだ。

ACCESS

ADAファーム
沖縄県国頭村
TEL 非公開
URL http://farmthefuture.jp/
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