人間と共生する豚 「塚原牧場 梅山豚」/茨城県猿島郡境町

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中国原産の希少種。

「産まれたばかりなんですよ」と言って、子豚を手渡される。中田の腕のなかで、ピギーピギーとうるさいぐらいに元気な声を出す、生後7日目の子豚。それを「おーおー」といってあやす中田もなかなかの見物だった…。
と、それはさておき、中田が抱いているのは梅山豚(めいしゃんとん)という豚。中国が原産で、かつてはパンダとともに、中国政府が贈答品として贈ってきたこともあるという希少種だ。 大人になると、耳が垂れ下がり、顔はしわだらけで少しブサイク。しかも、子どもを多く産む分、誕生後の飼育が難しいとされているこの豚を育てているのには理由がある。それは、人間と共生できるから。

21世紀を救う豚。

塚原牧場で梅山豚を食用豚として育てるきっかけとなったのはあるテレビ番組。「21世紀を救う豚」として梅山豚を特集していたのだという。どうして救うのか、塚原昇さんは丁寧に説明してくれた。 それは人間と寄り添って生きていく豚だということ。梅山豚は雑食性があり、実際に塚原牧場で与える飼料は、食品の製造過程で残った材料でまかなっている。見せていただいた飼料は、パンやパスタ、麦茶のしぼりかす、豆腐などを粉状にしたもの。
「今の日本では、食肉用の養豚のために大量のとうもろこしを輸入する。その一方ではとうもろこしも食べられずに飢えている人が世界にはいる。それはちょっと違うのではないかと思ったんです」 実は、とうもろこしよりも現在の飼料を製造するほうが、コストがかかる。しかし、塚原牧場ではそのコストと手間を惜しまずに、飼料を作り梅山豚を育てているという。

肉にも旬がある。

そうしてお互いに寄り添うように育つ梅山豚の肉の特徴は何といっても霜降り。ほかのどの豚と比べても、脂がしっかりと入った肉なのだ。しかも脂が軽いというのも特徴。その味を求めて予約が殺到し、今ではすぐに手に入れることはできないほど。現在は一般消費者、レストランともに、肉の直接販売のみを行なっているため、市場流通はほとんどできていない。 ただし将来的な希望として直営店を出したいという。「加工品なども作って、自分たちで作ったものを自分たちの手で売りたい」と話す。

「おいしいものはやっぱりおいしく食べたい。野菜だって旬のものを食べたほうがおいしい。そういうことを知っていろいろ食べたいんです」と中田が話すと、「豚肉にも旬があるんですよ」と塚原さんは教えてくれた。「冬に向かう直前。秋の終わりに体に栄養を溜め込んでいる時期が、一番おいしいんです」。豚肉にも旬があるとは。知れば知るほど、食は奥が深い。
現代社会のなかで人間と食用の生き物が共生するというのはどういうことか。1キロの豚肉のために、300キロのとうもろこしを消費する。それが悪いかどうかという答えは出ないだろう。ただ、「食」について考える、そのヒントのひとつは塚原牧場の梅山豚にあるのではないだろうか。

ACCESS

株式会社塚原牧場
茨城県猿島郡境町2170-1
URL http://www.meishanton.com/
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