お茶の産地として古くから有名な静岡に新たな風を呼び込む 安間製茶 安間孝介さん/静岡県袋井市

「飲む人に驚きと感動を与えるお茶」を目指して、独自の目線や発想を生かした茶づくりを行う安間製茶。
究極の茶の味わいを求めて挑戦することを忘れない姿勢が、茶業界に新しい風を吹き込みます。

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静岡県でお茶の世界に飛び込んだ異色の経歴の持ち主

静岡県といえば、牧之原台地に広がる大規模な茶畑を想像する人が多いと思うが、安間製茶があるのは袋井市。静岡県の南西部に位置し、全国有数のメロンの産地でも有名だが、山間の丘陵地では戦前から茶の栽培もおこなわれてきた。袋井市は静岡県内で最も古いお茶の産地のひとつとも言われている。

安間製茶は昭和21年に初代である安間五兵衛が創業し、孝介さんで3代目となる。決して規模は大きくないが、栽培から加工、販売まで、家族で行う創業70年を超える老舗だ。

家の目の前に茶畑が広がり、製茶工場も敷地内にある。呼吸をするたび、茶の爽やかな香りが鼻をくすぐるような錯覚を覚える。

「茶摘みをやってみますか?」そんな安間さんの誘いに乗って、中田が初めて茶摘み用のトラクターにのる。

「これは気持ちがいいなあ。少し高いところから見る茶畑もきれいですね」と中田も茶畑の美しさに心を癒されていた。

三代目となる安間孝介さんは高校の国語教師からウェブライターに転身し、さらに結婚を機に妻の実家の家業を継いで茶の道に飛び込んだという異色の経歴の持ち主だ。

「妻は中学時代の同級生なんです。もともと二人とも地元の出身なので、僕自身も茶畑に囲まれて育ちました。とはいえお茶はペットボトルくらいしか飲んだことがなかった(笑)。妻が淹れてくれたお茶を飲んだときにすごく驚いて、これをもっと多くの人に体験してもらいたいと思ったんです。もちろん最初は茶農家としてやっていけるだけの技術も知識もまったくなかったので、まずは静岡県立農林大学校で勉強してから就農しました」と安間さんは語った。社会人として様々な経験を経てから学校で学んだことで、安間さん独自の考え方が作られたのだろう。

旨味と甘みのこだわりのお茶

安間製茶のお茶はさまざまなコンテストで受賞してきたが、通常の緑茶に加え白葉茶(はくようちゃ)の生産も行っている。「白葉茶」とは、、特定のタイミングで99.99%以上の遮光をして栽培することでできるお茶だ。そうすることで葉が白くなり、甘みのもとになるアミノ酸の含有量が飛躍的に上がる。具体的には一般的な煎茶に比べ3倍、高級茶で知られる「玉露」と比べても、約2倍にまで高まる。また、苦味成分であるカテキンは大幅に減少するため、濃厚な旨味とさわやかな甘みがあるのが特長だ。栽培・製造が難しく手間もかかるため作り手も少なく、希少性の高いお茶である。安間さんはこの白葉茶の研究発表で農林水産大臣賞も受賞している。

「僕のようにお茶の本当の味を知らないで育っている若者も多いと思います。そういう人達にどうやって魅力を知ってもらえるか考えるのがこれからの自分の役割だと思っています」と安間さんは熱く語った。本当に日本茶の魅力を伝えることは、おいしいお茶を追求し続け、それをより多くの人に伝えようとする安間さんだからこそできることではないだろうか。

おいしいお茶をどこまでも追い求める

茶葉を工夫しておいしいお茶を追求するのはもちろんだが、それ以外の部分でも安間さんはお茶のおいしさを追求している。具体的には、日本茶を飲むのに必須である急須を研究して、開発したことがそれにあたる。

同じ袋井市にある瓦工事店と急須や器の共同開発を行った。独自で開発した瓦「粋月」は素材に炭素を含んでおり、旨味や甘みのもとであるアミノ酸を阻害するカフェインやカテキンを吸着する性質がある。こうすることで、旨味や甘みが特に強い「白葉茶」をさらにおいしいお茶へと引き上げることに成功した。この急須やお猪口のコンセプトは「機能を追求した新しい価値の提供」である。

安間さんは伝統のある文化に新しい風を吹き込むことで、お茶文化が後世まで残るように挑戦し続けている。自身がお茶のおいしさに衝撃を受けたように、今後多くの人が安間さんのお茶を飲むにより、日本のお茶の魅力を知ることになるだろう

安間製茶 代表 安間孝介さん

妻が初めて急須で淹れてくれたお茶の味は、私に「驚き」を与えてくれました。この時のような「驚き」や「感動」といった衝撃を、自分がつくるお茶を飲む人にも与えたい。この想いから、今日もお茶の新しい可能性を探り続けています。

ACCESS

安間製茶
静岡県袋井市豊沢491-30
TEL 0538-88-8893
URL http://www.ammaseicha.com/
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