世界が認めたサービス「あさば」
伊豆半島で最も歴史ある温泉街として知られる修善寺。桂川沿いの一角に凛と佇むひときわ立派な門構えの旅館がある。500年以上前の室町時代に創業し、その歴史の中で時の著名人たちから愛されてきた、押しも押されもしない、日本を代表する名旅館「あさば」である。
「あさば」は世界中でも超一流の宿やレストランにしか加盟が認められない、フランスの協会組織「ルレ・エ・シャトー」に、日本で初めて加盟し、そのサービスの素晴らしさは世界が認めている。
当主である浅羽家の先祖、浅羽弥九郎幸忠氏が修善寺曹洞宗開山のためにこの地を訪れたことに始まり、約1万坪の敷地内に竹林や滝といった自然の癒しと、その風景と溶け込むような日本建築の優雅さが、訪れる人たちの心身をくつろがせ、楽しませている。館内に入ってまず最初に目に飛び込んでくるのは、600坪もの広大な池に浮かぶ能舞台「月桂殿」。明治後期に移築されたものだが、今もなお、現役の能舞台として使われていて、能や狂言など、古典芸能の第一人者の舞台が定期的に開催されることも相まって、宿の象徴ともいえる存在になっている。各部屋からは能舞台をのぞめる造りになっており、宿そのものの歴史だけでなく、日本芸術の歴史も味わえる、まさに「日本のみやびを堪能する」宿だ。
手入れの行き届いた館内はすがすがしく、調度品は一目見るだけでその質の良さがつたわってくる。歴史を感じる日本の芸術品だけでなく、世界的なアーティストの名品や現代アートが、館内の至るところにさりげなくおいてある。それらを心ゆくまで鑑賞できる贅沢さがまた魅力の一つになっている。
食材の宝庫、伊豆の魚介類
客室は全15室に加え、離れにある特別部屋「天鼓」がある。「天鼓」には内風呂と、源泉掛け流しの露天風呂がついていて、広さがなんと220平方メートルもある。テラスや広縁、露天風呂からは庭一面を眺めることができ、特別な空間が上品でありながら、安らぎを与えてくれる。他の客室にも部屋ごとに臨める庭の景色があり、訪れる度に違う部屋を選べば、その時々の自然の姿を愛でることができる。館内の池のほとりにはサロンがあり、コーヒーを飲みながらゆっくり読書をしたり、部屋とは違う庭の一面を楽しめる。
旅の醍醐味、『食』についても一流さが垣間見える。伊豆は駿河湾や天城山麓の種類豊かな伝統野菜などに恵まれた食材の宝庫だ。料理でも定評のある「あさば」ではその日に上がった魚介で献立が組み立てられ、地元の食材が中心に使用されている。配膳室・厨房は各部屋のそばにあって、食事はすべて部屋に運ばれてくる。温かいものは温かいうちに、香りが大切な食材はその香りが消えぬうちに、食事の進むテンポに合わせて一番美味しいタイミングで提供してくれるのだ。そういった心配りが食事の質を最上級にしてくれている。
はるかむかし、500年以上前から変わらず愛されつづける「あさば」。そこには脈々と受け継がれてきた美意識とおもてなしのこころがある。