木曽の木材と伝統的な漆塗り
木曽アルテック社は、木曽の良質な木材と伝統的な漆塗りの技術を生かした製品が特徴で、家具から建築空間に至るまで、手仕事にこだわった提案をし続けている。中田が主宰する2015年度のRVALUE NIPPON PROJECTにも参加。漆というテーマのもと中田とのコラボ作品で漆の浴槽を製作し、日本の技術力を世界へと発信した。「漆は人の肌と似ているところがある。 “滑るのでは?”と心配されるが、漆の風呂は人肌のように、きめ細かく吸いつくような感覚だ」と同社代表で造形家の齊藤寛親さんは語る。
完全防水で不燃の漆和紙
齊藤さんが見せてくれたのは、木製のワインを美味しくするワインエアレーターだ。上からワインを入れると、中央にある切れ目から入った空気がワインを酸化させ、味をまろやかにするという。中田も興味深そうに覗きこみ、「さっそく試してみたい」と応じた。次いで、珍しい漆和紙を見せてもらう。「きれい」と息をのむような美しさ。「漆を塗ることによって完全防水になり、洗面所や台所にも使える」と齊藤さん。不燃材として認定を取っているので、大規模建築の内装にも用いることができる。現在は空港のラウンジや外資系ホテルの壁紙にも採用されているという。
漆塗りは機械では真似できない職人技
作業場では漆職人が漆を塗るところを拝見した。「肌合いを出すためにムラがあったほうがいいのか、ないほうがいいのか」と中田が問うと、齊藤さんは「私はムラがあったほうがいいと思っている。漆塗りは感性的だ」と話した。板を鉋で削る工程では、木工職人が板の表面を鉋で滑らかにしていた。「鉋というのは職人の仕事。最近ではベルトサンダーを使って簡単につるつるにすることもできるが、それだと細かい毛羽立ちが上がって、木の肌はざらっとしてしまう。鉋は大変な作業だ」と手作業の大切さと語った。