王族の衣装であった紅型
琉球王朝時代に王族しか着衣を許されなかった沖縄の伝統衣装の紅型(びんがた)。作り手も限られていて、城間びんがた工房は琉球王朝時代から続く紅型三宗家の一つだ。城間びんがた十六代目の城間栄市さんに、いくつか紅型の絵柄を見せてもらい、「紅型というと、黄色やブルーが独特のイメージが強い」と中田。城間さんは「黄色は王様だけの色で、ブルーは紅型が得意とする色だ」と教えてくれた。藍型という藍一色で型染めされた物もあり、こちらは武士が着たものだそうだ。藍色は海の色のように深い。
型作りと柄をぼかす技術
特別に城間さんが見せてくれたのは、自作の「琉球紅入藍型」。藍の型の上に黄色や赤の模様が手描きされている。「本当に素晴らしい」と中田は柄と色の美しさに目を見張った。紅型に欠かせない型。紅型には型紙の模様が描かれている。型は突き掘りという、型となる紙に一つ一つ穴をあげる手法で作られ、1枚の型を仕上げるのに約1ヵ月要するという。工房では、長い生地に絵付けの工程が行なわれていた。濃い色を入れ、それをぼかしながら刷り込む隈取りという作業は、琉球紅型独特の手法だ。「隈取りをすることで模様の強弱、立体感、遠近感を出すことが出来る」と城間さん。今でもぼかし用の筆は女性の髪の毛の筆を使っているそうだ。
美しい古典柄の振袖
松や海など古典柄の振袖について「松の柄は一般的には緑だが、沖縄の人の解釈で色遣いを赤や藍にしている」と城間さんは中田に話した。戦後の柄はハイビスカス、ブーゲンビリアなど沖縄県内の植物が描かれているのに対し、古典柄は「雪輪」など沖縄に存在しなかった絵柄が絵描かれているのが特徴だ。王族の本土への憧れや本土との交流の中で生まれたものだという。城間さんは、「色遣いに独特なものを感じるかもしれないが、最終的には古典柄の良さを解ってもらえたら。琉球の歴史を身近に感じると、古典柄がだんだんよく見えてくる」と話してくれた。