センスが光る漆の器づくり
札幌を中心に活動する陶芸家の西村和さんは、さまざま素材を組み合わせた象嵌作家として評価を得ている。3年ほど前から漆を使った作品づくりも始めた。漆の面白さを「個人的に釉薬と同じ意識で漆を使っています。焼きつけのちょっとした温度変化で色が変わってしまう」と語る。模様は幾何学文様が主で、特に興味が惹かれたものは草木柄も描いている。「アイヌ民族の幾何学文様も本州にはない柄だと思うが、そういう柄なら陶器でも木彫りのように見えるかもしれない」と中田。別の質感に見える素材と模様に話題が膨らんだ。
薄くて軽い、シンプルだけれどユニークな茶碗
「おばあちゃんの家にあっても現代的なマンションの食卓でも溶け込むものを」というのが食器作りのこだわりだ。「お茶碗は重たいのは嫌いなので、軽くて薄いものを作りたい」と西村さん。「シンプルできれい。どこでも見たことがない」と中田も優美で卓越したセンスを称えた。漆を使った茶碗は食洗機や電子レンジは不可だが、陶器の茶碗とは違って、ぶつかった時にカツカツとした音が出ない。更に漆の上に錫を蒔いて仕上げると、それは金属のような音がするのだといい、素材から発せられる「音」もまたそれぞれに特徴があって興味深い。
丁寧に小皿に文様を刻む
直線的な文様でも定規は使わずに描かれる。「曲面に描くので、手で直線をひいたほうがきれいになる」と西村さん。象嵌の皿づくりを実際に体験させてもらうことに。信楽の粘土の小皿に幾何学文様を刻んでいく。「定規を使ってもまっすぐにならない」と言いつつも、集中が途切れることなく、慎重に丁寧に作業を続けた。全工程の中ではマスキングで模様をつけるところが一番の難所だ。「マスキングでは液体ゴムを使います。なぞって細い筆で描きますが、この作業がもっとも大変だ」と教えてくれた。