スコットランドの技術に学ぶウイスキー
日本のウイスキーの父 竹鶴政孝が創業したニッカウヰスキー。スコットランドのウイスキーの製造技術を日本に持ち帰り、ウイスキーづくりに人生を捧げた人である。幾度もの困難を乗り越えて作られたウイスキーの歴史は、テレビでも取り上げられ、記憶に新しい。余市蒸溜所は1934年に始まり、本物のウイスキーづくりの情熱と伝統を受け継ぐ場所だ。ウイスキー市場は2007~08年頃、ピーク時の1/5程度まで減ってしまったが、ハイボールブームやテレビドラマの影響などもあり、ここへ来てまた盛り返しの兆しが見られるという。
世界で唯一の石炭直火蒸溜
ウイスキーの独特の香りを決めるのがピート(泥炭)だ。この泥炭が豊富に採れることやスコットランドに似た気候、風土であったことから、この地が蒸溜地に選ばれた。「ピート香をどうつけるかによって蒸溜所の特徴がでる」のだという。また余市蒸溜所は世界中でただ一つの石炭直火蒸溜を残した蒸溜所となる。創業当時からの変わらぬ手法で、火をゆっくりと焚き、ゆっくりと蒸溜する、それが香り高くコクのあるモルトをつくる。「熟練職人の技と勘の世界。それが伝統の味を守っている」と聞き、中田も感嘆しきりであった。
リタ夫人との思い出に触れる
竹鶴さんにとって、ウイスキー留学当時に運命的に出会ったスコットランド人のリタさんの存在は大きい。広々とした敷地内では、ウイスキー製造の工程のほか、リタさんとの生活も垣間見ることもできる。和食が多かったというダイニング、毎晩ウイスキーで晩酌をしていたという寝室など、当時の息使いそのままに保存されている。余市蒸溜所の建造物9棟は登録有形文化財(建造物)として認定され、中田が訪れたこの日も多くの見学者で賑わっていた。