江戸中期から続く港町枕崎で生まれる最高級の鰹節「本枯れ節」

江戸中期から続く港町枕崎で生まれる最高級の鰹節
「本枯れ節」

「本場の本物」を作る

江戸中期から続く港町・枕崎は、鰹節の生産量全国1位を誇る鹿児島でも、古くから鰹節の水揚げと、鰹節生産が盛んな街だ。
鰹節は、加工工程の違いによって名称が異なる。関西で多く使われる、鰹を茹でて薫製にしたものを「荒節」、「荒節」を削ったものを、「花かつお」または「鰹けずり節」と呼び、関東のほうで使われる、カビを付けることにより微妙に水分を抜きながら熟成させたものを「枯れ節」という。「枕崎鰹節の本枯れ節」は、カビ付けにより鰹の旨味成分イノシン酸が増えた豊かな熟成品であり、鰹節の中でも最高級品といわれている。
食品産業センターが選定する、地域食品ブランドの「本場の本物」。それは、伝統的に培われた「本場」の製法で、地域特有の食材などの厳選原料を用いて「本物」の味をつくり続ける製造者の証。枕崎に鰹節の製法が伝えられて300年以上経つといわれているが、この「本場の本物」に認定された枕崎鰹節の本枯れ節は、枕崎で生産される鰹節のうちわずか3%とか。その本場の本物に認定される鰹節を一目見たいと、水産加工業共同組合からある店を紹介してもらった。

ひとつひとつ手作業で進む

紹介された神山鰹節店に足を運ぶと、5人の職人さんが黙々と作業をしていた。彼らの間を鰹がつぎつぎと流れながら、その形を変えていく。
本枯れ節の工程を簡単に紹介すると

1:水揚げ・保管・・・枕崎漁港で鰹が水揚げされ、鮮度を保つために大型冷蔵庫へ保管される
2:出庫・・・保管されていた-25℃の冷凍冷蔵庫から鰹を出庫、水を循環させながら解凍する
3:生切り(1)・・・鰹の頭と腹身を切り取り、内臓を除去、その後で三枚に卸す
4:生きり(2)・・・三枚に卸した鰹の身を背中と腹側に、血合いを境に切り分ける4本にする
5:籠立て・・・鰹の身を煮籠に並べる。この工程は節の形を左右するので丁寧に
6:煮熟・・・90℃~95℃のお湯で60~90分間煮込みながら、丁寧にアクを抜く
7:骨抜き・・・鰹の身を冷まし、専用の器具で骨や皮下脂肪、汚れを取り除く
8:修繕・・・鰹のすり身を隙間や亀裂にすりこみ、きれいに成型する
9:直火培乾・・・ナラ、クヌギ、カシといった堅木の薪を燃やし、節を乾燥させる。1日に4~5回の薪を焚き、夜は余熱で冷ます作業を2~3週間に渡って繰り返す
10:削り・・・表面に付着したタール分と、にじみ出た脂肪分を削って取り除く
11:カビ付け・・・水分を減らし、脂肪を分解して香味を引き出す作業。2~3週間で一番カビが付着するので、天日干し乾燥をして、再びカビ付けを行う。この作業を3~4回繰り返すことで本枯れ節が完成する。

職人が生み出す最高の品質

中田もこの生切りを体験。この道40年以上の名人といわれる神山芳行さんの横で、鰹を加工させてもらった。1日に100匹以上の鰹をさばく。たくさんの鰹をすばやく、しかも綺麗に切り分ける作業は熟練した職人ならではであるが、作業の一端を手伝わせてもらったことで、その難しさを体感することができた。

つかの間の休憩後、今度は出来上がった鰹節を削る作業にも挑戦。日本でも数人しかできないといわれる“薩摩切り”の名人でもある芳行さんの“技”も間近で見せてもらった。そこには、一見単調にも見える作業の一つ一つに、神山鰹節店のこだわりがあった。

ACCESS

神山鰹節店
鹿児島県枕崎市恵比須町192番