酢の名醸地 尾道の歴史
地元に密着した昭和の町並みが広がる尾道の商店街。そのアーケードを少し抜けたところに尾道造酢の社屋がある。足を踏み入れるとさわやかに酢が香る。だが、鼻をツンとつくような刺激はなく、甘みを含んだふくよかな香りだ。本能寺の変が起こった年でもある1582年に創業し、以来約400年以上こだわりのお酢を造り続けてきた。
「尾道での酢づくりは、1500年代に始まったといわれています。堺で酢造りをしていた職人が、この地でつくりはじめたそうです。現在は2社を残すのみですが、明治期には10社が酢をつくっていて、全国的にも有名な産地だったんです」と尾道造酢の取締役工場長丸尾仁人は話す。
健康にもよい酢の効果
ふくよかな香りの理由は、昔ながらの作り方にある。ここでは日本酒蔵から酒粕を仕入れ、それを3年寝かせじゅうぶんに熟成したところで酢の材料にしている。まずは水で溶き、そこに種酢を加えて酢酸発酵させると酢が出来上がる。工場内には、細長い発酵槽があり、そこを酢酸菌の膜を張った酢がゆっくりと流れることでまろやかなお酢が出来上がる。
ここで発生した酢酸などをはじめとする有機酸が、血糖値を下げたり、血圧の緩やかな上昇を促したりしている。このようなことから酢は、体に良い食品として現在でも人気である。さらに400年以上守られている良質な酢酸菌だからこそ、ふくよかな香りで健康にもよい酢を作り出せている。
良さを残して変化し続ける商品
「実は、昔作ったものがそのまま残っているんですよ」と丸尾さんに案内されたのは、社内の秘密の“蔵”。そこには昭和30年代につくられた酢が甕に入れられたまま保存されている。熟成した60年ものの酢を味わってみると、高級なバルサミコ酢のように芳醇で上品な甘みとほんのりとした酸味で、えぐみはまったくない。これぞ400年以上の歴史がつくりあげた味。長年、この蔵で働いてきた酢酸菌の力を感じる味わいだった。
現在ではその長年の大切にしてきた酢酸菌を用いて新たな商品も開発している。現在の人気商品は、調味酢や薄めて飲むフルーツビネガーなどだ。近年話題となっているフルーツビネガーは若い女性にも人気があり、ヨーグルトやアイスと合わせて食べるのも絶品だ。えぐみがなく、まろやかな口当たりの尾道造酢の商品は、今後もさらに形を変え、私たちの健康をよりよくしてくれるだろう。
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