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奈良井宿の町家づくり
中村邸は元は櫛問屋中村利兵衛の屋敷で、奈良井宿の典型的な町屋づくりを今に伝えている。旧楢川村有形文化財として一般公開されており、建物の二階では当時の漆櫛や資料も展示されている。邸内は整然とととのえられており、間口の高い天井が大きな開放感をもたらすつくりだ。案内人の方より、およそ180年前、江戸の終わり頃の建物だと聞き、感嘆する中田。広々とした邸内を見渡しながら、昔の人々の暮らしに思いを馳せた。
中村邸の茶室
室内にある箱階段を上ると小さな茶室がある。中田は座って障子戸を開き、外を眺めて、「ここで人々の往来を見るのも楽しい」と話した。茶室の上部にある戸棚には戸袋があり、きれいな絵柄が描かれている。この戸袋は下方に向いて、斜めになっており、立った状態では傾いているように見える。これはお茶をいただく時など座った姿勢で、絵柄が正面に見えるようにするためなのだという。
中村邸の潜り戸と猿頭の防犯対策
屋外に出て中村邸の外観を見る。小屋根のようになった庇(ひさし)には、猿の頭の形状に加工した木製の猿頭(さるがしら)が使われている。屋根板を並べて、下から釘を打つというつくり方は、泥棒が乗りかかった時に壊れやすくするための工夫だという。中山道でもここでしか見られない貴重なものだ。もう一つの防犯対策として挙げられるのは、やはり潜り戸になっている小さな戸口。寒い地域なので、出入りするときに寒い風が入らないようにするという寒さ対策でもある。