約350年の歴史を誇る男山
酒蔵の地・伊丹を発端とし、約350年の歴史を誇る男山。万年雪の大雪山を擁し、澄んだ地下水が現代に伝わる伝統の名酒を生みだす。近所の人々も汲みにくるという、尽きることのない豊富な水資源。量も質もよい中硬水で清酒醸造に欠かせないものだ。
もともと北海道は東北とは違い、日本酒が産業として大きくはなかった。「清酒醸造の地盤のなかったこの地で、米選びも麹も思考錯誤しながら、積み上げてきた」と蔵元は振り返る。
この地が焼酎の一大メッカであることは意外と知られていないが、その中で脈々と受け継がれてきたのが、焼酎に負けないくらい切れ味のある、すっきりとした味わいの清酒だ。
杜氏の手による生酛(きもと)の純米酒
男山は岩手の南部杜氏に師事してきた。「男山 生酛純米」は、もっとも伝統的な酒造法であり、一つひとつ丁寧にしこまれる生酛(きもと)で造られる。
「生酛は毎年様子が違っていて、前段階でのコントロールが非常に難しい。当たれば香りがふくらみ、美味しいものができあがる」。人の手と、長年の勘が何よりも酒の出来栄えを左右するのだ。
現在では道内で5割、道外で3割、2割弱が海外で消費されている。優れた発酵技術を見て、「欧州の醸造に近いものを感じる。長期熟成に合うのではないか」と中田は想いをふくらませる。
男山の多様な味わいが魅力の美酒が並ぶ
男山の歴史を伝える酒造り資料舘には、国内外から年間17万人もの人が訪れる。当地でした買えない酒は人気の的で、いくつか実際に試飲させてもらうことにした。生酛でつくられた清酒を一口いただくと、芳潤な香りとともに「やっぱりすっきりしている」と中田。
「酸味を残すように造っている」という特別純米・原酒「御免酒」は珍しい一品だ。切れ味のある旨味が特徴で、「ワインと同じくらいの酸味がある」と中田もことさら印象深げである。ここでしか買えない限定品の本醸造酒についても「のどにくる感じがなくて飲みやすい」と舌鼓を打った。