放浪の旅から得た経験で自然農法を始める
合鴨農法とタニシ農法を駆使して、農薬を使わないお米作りに邁進している百姓・木村さん。その木村さんのもとを訪れて、自然農法についてお話を伺った。
かつて木村さんは、放浪の旅に出たことがある。南アジアやアフリカを何カ月もかけてまわり、カースト制度の残るインドでは、メイドが何くれと世話してくれる豊かな人々と、腰布一枚で生活している貧しい人々のギャップに衝撃を受けた。けれども、電気が通っていない貧しい家でも、人々は焚き火のまわりに集まり、笑い合って生きている。
“お金がないことは、決して貧しいことではない”と気付いた木村さんは、自然とじっくり向き合って生活するべく、帰国後、農業に取り組むことに。
日本は豊かになったが、もしお金があっても物がなかったら……、大変なことになる。当初は、威勢よく茂る雑草に四苦八苦。その勢いには勝てず、除草剤や化学肥料とも手が切れなかった。“こんなことを続けていては、真っ先に自分が病気になる”と感じていた矢先に出会ったのが、合鴨農法やタニシ農法だ。
合鴨農法とタニシ農法で豊かな田んぼに
合鴨農法とは、田植えの時期に田に合鴨を放し、雑草や害虫を食べてもらう農法。フンは田の栄養になり、合鴨が泳ぐことで土が耕されて稲の成長も助けてくれる。
一方、タニシ農法とは、田植え直後の若い苗を食べる害虫、ジャンボタニシの生態を逆手にとった農法。苗を植えたあと、20日ほどは田から水を引いておく。ジャンボタニシは柔らかい草を好むので、その後水を入れると、育った稲は食べられず、生えてきた若い雑草だけ食べてくれるという方法だ。
この2つの方法で除草剤は必要なくなり、結果、微生物や昆虫がたくさん住む、お米が喜ぶ豊かな田んぼになった。
自分のための自然農法が消費者のために
もともと自分の健康が心配でたどり着いた自然農法だったが、それは消費者の目線でもある。そのこだわりのお米は、県の「エコやまぐち100%」(化学農薬、化学肥料不使用栽培農産物)に認定され、いまは県内の給食でも子どもたちをすくすく育てている。