うまみを科学し料理をもっと美味しく。フタバの「だし」の奥深い世界

うまみを科学し料理をもっと美味しく。フタバの「だし」の奥深い世界。

日本の料理に欠かせない「だし」。その歴史は古く奈良時代までさかのぼるという。上質な美味しいだしの存在は、料理にうまみと深みをもたらす。昭和28年(1953年)に創業し、新潟県のほぼ中央に位置する三条市に本社を置く株式会社フタバは、全国のホテルや旅館、割烹などに業務用のだしパックを提供している、プロの料理人向けの総合だしメーカーだ。その特徴は、うまみが詰まったエキスパック。まだだしパックが存在していなかった時代、お茶や紅茶のパックからヒントを得て、鰹節粉砕品に鰹エキスをコーティングした天然調味料をパックに詰めた商品を開発した。このだしパックの誕生により、野菜や乾物など複数種類の食材からだしをとっている飲食店は、決められた個数のだしパックを使用するだけでよくなり、味の均一化や効率化が進んだ。特に客数の多い大型ホテルや旅館などからフタバのだしは重宝されている。

だしは毎日使うものだからこそ、フタバでは化学調味料・保存料無添加にこだわり品質と安全性に徹底的に向き合っている。主な原料は鰹だが、その他にも宗田鰹、鯖、鰯、鮪、ムロアジ、トビウオ、昆布、しいたけなど、あらゆる種類を厳選して仕入れ、官能検査を行い、香り、味、だし色、透明度など様々な品質基準をクリアした商品だけが各地の調理場へと出荷される。全国のプロの料理人から信頼されるのは、ブレンドの技術はもちろん、いつも変わらないブレのない味わいを実現する品質の安定性に加え、化学調味料や食品添加物を一切使わない信念にもある。


だしのうまみについては、今も最先端の研究が続く。フタバのコンセプトは「ダシを科学する」である。人間の味覚による官能検査だけでなく、研究所を設け、分析機器による科学分析にも力を入れている。栄養成分、タンパク質、アミノ酸などを最新鋭の設備で数値化し、「美味しいだしというのは何なのか」を常に考えている。そもそも「うまみ」と形容される成分には、まだわからないことが多い。

研究を重ねることで、新しいアイディアが創出され、新商品も数多く生まれる。最近は、玉ねぎやにんじん、キャベツなどのうまみを閉じこめた野菜だしの評判がいいという。社内に「農業チーム」を立ち上げ原料となる野菜の自社栽培をはじめた。現在は仕入れ品と自社で収穫したものをブレンドして使用しているが、今後は自社栽培の比率を増やし安全性や品質の安定を原料からもこだわりたいと考えている。また、だしを使う相手によっても提供する商品は異なることから、だしの総合メーカーとして、様々な種類のだしがこれまでに開発されてきた。例えば、一般家庭の毎日の食卓では、バランスよく完成されたうまみが求められる。一方、板前さんやプロの料理人のためには、素材の特徴をいかし、調理者が自分でうまみを設計できるだしが必要になる。

「もっとより多くの人々が、美味しく手軽に料理を作れるように、だしの可能性を広げていきたい」と代表取締役社長の江口晃さんは語る。そのために一般消費者向けのライフスタイルブランド「ON THE UMAMI」を立ち上げ、和洋中使えるさまざまな種類の家庭用のだしをラインナップ。オンラインショップや店舗での商品販売をはじめた。日本の伝統的な鰹だし、昆布だしはお味噌汁だけでなくおにぎりにも使えると人気。また鶏だしは卵スープやチャーハンの隠し味などにも重宝する。ベジブロスとして使える野菜だしはカレーやパスタなどの格上げにもその旨味を発揮する。他にも、離乳食向けのだし、コーヒーやスープの感覚で飲めるハンドドリップのだし、リゾットやパスタソースなど、実にバラエティ豊かだ。日本人ならではの食文化の中にある繊細な感性や感覚を日常の中で気づき感じてもらえる機会を提案している。


日本の和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、うま味が「MAMI」として世界共通の公用語となって知られるようになった今日だが、これからもフタバのだしが日本の文化を代表して海外でも愛されるブランドになれるよう育てたいと江口さん。だしの可能性を広げていくフタバの今後の商品展開が楽しみだ。

ACCESS

株式会社フタバ
新潟県三条市川通中町477番地
TEL 0256-45-7272
URL https://www.futaba-com.co.jp