NIHONMONO「にほん」の「ほんもの」を巡る旅マガジン

素朴さが生み出す、自分だけの特別な時間と空間「里海邸」

素朴さが生み出す、自分だけの特別な時間と空間「里海邸」

茨城県の海岸線の中央に位置する太平洋を臨む大洗町は、素晴らしい海辺風景を選りすぐった「日本の渚百選」にも選ばれた大洗海岸で知られる港町だ。明治の中ごろには医療のための海水浴「潮湯治」の場として、東京などから寄宿する人たちの旅館が建ち活気を見せていた。そんな大洗海岸沿いにたたずむ宿が「里海邸 金波楼本邸」だ。

「里海邸」は、1888(明治21)年、水戸と大洗を結ぶ川蒸気事業(水上交通)を行なっていた石井藤助氏によって、海水を引き込んだ風呂で人々が季節を問わず潮湯治できる保養旅館「金波楼」として開業したのが始まりである。かつて「金波楼」が目指していた、「海の風情を深くたのしむ保養宿」の魅力を再現するため、「里海邸」として生まれ変わった。宿から海辺まではおおよそ30mほど。大海原を前に、潮風を浴びながら波音のリズムに耳を傾ければ、どこか懐かしい気持ちになって、心が落ち着いてくるから不思議である。

宿には華やかなものは一切置かれていない。素朴さや居心地の良さを大切にし、宿泊者が自分の田舎や別荘に帰ってきたような落ち着きを感じられるよう、館内は裸足で過ごせる造りになっている。全8室の部屋全てがオーシャンフロントで、その眺望の素晴らしさもさることながら、どの部屋でも木の家具や無垢木材の素朴な温もりが心地よく、そこにずっと居座っていたくなるような落ち着きを感じられる。特別なものは何もないはずなのに、自分だけの特別な時間と居場所であるような、「里海邸」が作り出す素朴さや田舎感は、「また帰ってきたくなる場所」を醸している。

宿で楽しめる料理も、「海辺の日常」が味わえるものが中心である。仕入れはすぐ近くの魚屋や野菜直売所に毎日通い、午後から食材を捌き始めると、「里海邸」の台所は大忙しだという。大洗海岸を眺めながら、木の温もりを感じる部屋で味わう食事は、特別なのに居心地の良い「里海邸」ならではの食卓になる。

海の眺望は風呂でも楽しめる。2種類ある風呂は「木の風呂」と「石の風呂」。そのどちらにも大洗磯前神社のご神水の水源である大洗山の湧水が使用されていて、1000年以上もの歴史がある湧水だそうだ。「木の風呂」には風呂上がりに利用できるリラックススペースが併設されていて、ルーフバルコニーから海を眺めながら、ハーブティーやジュースで喉を潤すのも良いだろう。

宿の近くには、四季折々の楽しみ方ができるスポットもある。春にはネモフィラ、秋にはコキアを一面に咲かせる「ひたち海浜公園」、夏はビーチや水族館を訪れるのもおすすめだ。冬に宿を訪れた時には、冷え込みが強い朝に見られるという「気嵐」の幻想的な雰囲気に包まれながら、部屋にこもって過ごしてみるのもいい。

宿から出かける楽しみと、早く帰りたくなるような居心地の良さ、その両方の魅力が「里海邸」にはある。

ACCESS

里海邸 金波楼本邸
茨城県東茨城郡大洗町磯浜町6883
TEL 029-267-2101
URL https://www.satoumitei.jp